3/31/2023

戦う理学療法士☆マサシ(最終話)


 帰宅して直ぐに廊下の隅々を入念にチェックし、キッチンのシンク下の戸棚を恐る恐る開けるマサシ。
  マンションの管理会社と建築業者が調査に訪れ、「奴ら」の侵入ルートである穴や隙間が見つかった後、それら全てを塞いでもらったあの日から一週間が過ぎようとしていた。
 
 それ以降、「奴ら」の姿を目にした事はない。しかし、長い戦いの中で習慣となっていたこの点検は今でも無意識に行っているのだ。
 習慣といえば、「奴ら」のおかげで身に付いた事がもう一つある。それは、毎日必ず掃除機 をかけるようになった事だ。これはいい習慣が身に付いたものだ、とマサシは思った。 


家族への感謝と気付き


 振り返れば、実家にいた頃は虫の心配などとは無縁で、掃除はいつも母がやってくれてい た。それだけではない。いつも洗濯済みの綺麗な服があり、仕事から帰ったら食事が用意され ていた。これまで、両親や家族にどれだけ支えられていたのだろう。マサシは思いを巡らせ、 家族への感謝の気持ちでいっぱいになった。 
 
 一人暮らしを始めたのは自立した大人になる事が目標の一つだった。理学療法士として生計 を立て、毎日自炊をし、洗濯も掃除もきちんとする。自分にできる事を一つでも増やしていきたかった。家事の大変さを初めて知った。同時に家を整える事の大切さにも気付けた。 
 
 一人暮らしを始めてからの様々な出来事が、自分のレベルを上げてくれたように感じ、自信に繋がった。何だか視野が広がったような気もする。


理学療法士として




 理学療法士として日々患者さんと関わる中で、どうすればこの方がより良い暮らしができる ようになるだろう、自分には何ができるのだろう、そんな事を考えながら仕事をするようにな っていた。 
 
 去年の自分よりも成長していたい!今そう思えるのは、両親や家族が支えてくれていたか ら、そして府中教会の皆さんに育てて頂いたから! 
 今日もマサシは、明るい笑顔で患者さんに語りかける。


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あとがき

 府中教会青年部の中心的存在であり、ムードメーカーのマサシ。
「明るく元気な優しい青年」。マサシと出会った時に私はそんな印象を抱いた。
 理学療法士になるため、努力を重ね、困難な時も仏さまの教えに沿い、サンガと共に歩んできたマサシの姿が思い出される。
 今回、この連載記事を書かせて頂いたお陰さまで、社会人となり、自立した今も、府中教会で学んだ多くの事を日常で活かしながら前進し続けるリアルなマサシの姿を見る事ができた。
 人さまのお役に立ちたい。今自分にできる事は何だろう。そんな思いで仕事に取り組む理学療法士としてのマサシがそこにいた。

青年部長 吉沼啓二朗

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