府中の普賢寺のイベントをチェックしていて、マンガ『阿・吽』オンライン読書会を知りました。
『阿・吽』全14巻
ちょうどお正月に『阿・吽』全14巻をイッキ読みしたばかり。
空海と最澄の「救い」とは何かを探求していく生涯に、力をもらっていました。
読書会は、一般社団法人ダイアログ・ラーニングの井上真祈子さんの司会で、普賢寺の小野常寛住職、長野にある長谷寺の岡澤慶澄住職が、最澄の天台宗と、空海の真言宗の信仰体験を解説。
さらに、書家の薛翔文さん、身体教育家の林久仁則さん(NHK趣味どきっ!に出演)、教育系企業会社員の竹内新さんをゲストに多彩な視点で『阿・吽』の世界観が語られました。
Zoomの参加者は総勢43人。
チャット欄で自由に語り合える雰囲気でしたので、私も質問してみました。
◆最澄と徳一の「三一権実論争」
問い「なぜ最澄は徳一に対して、あれほど激昂したのでしょうか」 出典:『阿・吽』13巻「徳一菩薩」おかざき真里
徳一に激昂する最澄
マンガでは13巻、坂上田村麻呂の東征などを経て復興しつつある、純朴な会津の人たちが描かれます。
出典:『阿・吽』8巻(扉絵・坂上田村麻呂)おかざき真里
三春駒は坂上田村麻呂の伝説から生まれました。
出典:『阿・吽』13巻「徳一菩薩」おかざき真里ジョウブツできなくても?
私は福島の出身ですが、会津にも磐城(いわき)の古寺名刹にも、徳一菩薩の布教の事績が残されています。
『阿・吽』では、最澄と烈しく論争するヒールとして描かれている法相宗の徳一。
「一人残らず救う」と誓願する最澄に対し、「荒涼とした現実にさえ己の分がある。己の役割を知らせてやるほうが生きる実感があろうというもの」と疑問を投げかける徳一。
一乗真実、三乗方便はまやかしで、三乗こそ真実と言う徳一の真意はいかに。
二人の激烈な論争は、すべてに仏性有りという思想に対する問答であり、仏教史上最大の対決です。
そのあいだで最澄を心配する空海の姿も、マンガでは印象的。
◆最澄も徳一も人々を導こうという思いは共有
小野住職が、最澄の「すべて救う」という願や、徳一が当時から東北の人々に慕われていたことなどを教えてくださいました。
参加者の中には、徳一開山のお寺のご住職もいらっしゃいました。
出典:『阿・吽』4巻「三車火宅」おかざき真里
「救い」は無限です!
「わかりきらないまま、わかろうとする…」
という小野住職の言葉も心に残りました。
両者が目指す方向は異なっていたとしても、言葉と論理を用いてそれぞれが思う正しい方向に赴こう、人々を導こうという思いは共有していたのではないか。
(『最澄と徳一 仏教史上最大の対決』師茂樹)
「正しい」とは…。
最澄と
徳一の論争に、
空海はどのような視線を向けていたのか。
最澄と空海の二項対立では見えない信仰世界が、徳一や坂上田村麻呂などを交えた群像劇のなかで、「救い、救われ」とは何かを読む者に問いかけます。
『阿・吽』読書会は続編がありそうです。
次回はぜひ、みなさんも参加してみてはいかがでしょうか。
(さとう)
Info
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<参考資料>
マンガ『阿・吽』おかざき真里/小学館
『最澄と徳一 仏教史上最大の対決』師茂樹/岩波新書
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